大石圭さんの『裏アカ』という小説を読んだ。何の前情報もなく、ただ図書館で目に付いたものを手に取っただけ。
ポチップ
きっと今や、誰でも裏アカを持っている。元恋人のインスタグラムをチェックする人、別の自己表現をしたい人、時には自分の嫌いな人の同行をチェックするために、わざわざ裏アカを作る人もいる。その理由はポジティブなものもネガティブなものもあるだろうけれど、かなりの確率で裏アカを持っているだろうと思う。
この小説の主人公は、女性。人生がうまくいかないと思いつつ、ある意味の諦めの感情を持ちながら日々を暮らしている。そんな中で、ある時Twitterに裏アカを作る。そして、顔を写さずに、セクシャルな画像や動画を投稿するようになる。それはただ、『いいね』をたくさん得ることで、自分の心を満たしたいと思ったから。
はっきり言うと、この小説を読んだ後には、不快感しか残らなかった。ストーリーに結末の伏線がありすぎて、結末が容易に想像できたところが、その原因だ。また、感情表現が浅い。女の寂しさとかむなしさの感情って、そんな浅いものじゃない。作者はそんな気は全くないと思うけれど、正直女性を馬鹿にしている？と思ってしまうような内容だった。
とはいえ、現実的に、『いいね』が欲しいと思う、そういう人はいまだにたくさんいるだろうし、SNS上で見栄を張って「幸せぶっている」人は山のようにいる。私が思うに、SNSで幸せを演じれば演じるほど、むなしくなるはずなのに、『いいね』を得ることで、満たされた気持ちを感じてしまう。しかしそれは偽物なのである。
そういえば、Xが新しいアカウントを作るのには有料にするという方針を打ち出した。BOT対策のようだけれど。今は一部の国だけのようだけど、そのうちに全世界へ適用されるのだろう。こういう動きを見ていると、そろそろSNSで幸せぶって、演じることは下火になっていくだろう。裏アカを作って、嫌がらせをしたい人たちも、減っていくといい。どのようなツールでも同じだけれど、結局のところ、使う人によって、それを陰湿な行為に使うこともあるし、自分の前向きな行動につながるものにする人もいる。裏アカが悪いとは思わないけれど、ポジティブな使い方をしていくことが大事だと、思う。
